ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

オルフェウスの窓 魅力ある登場人物 イザーク

ピアノコンチェルト「皇帝」を弾くイザーク

イザーク・ゴットヒルフ・ヴァイスハイト

誠実で文字通り優等生、イザークはいつも冷静で感情が安定しています。辛い境遇にも人を羨むことがなく、人生の哲学をしっかりと持っている彼からは両親の素晴しい人柄がしのばれます。猜疑心がなく、ある部分鈍感というか純粋というか、危ない女に引っ掛かりやすく、再びアマーリエにもて遊ばされそうになったときは、このアホッとつぶやいてしまいました。

でも、モーリッツにも、アマーリエに対しても恨むという選択肢がなく、計算しない人柄は魅力的です。清廉潔白な人柄にあふれる才能、音楽に真摯に向き合う彼のピアノの教師ぶりはすてきだったと思います。カタリーナが彼に魅かれたのは当然の成り行きだったでしょう。

 

勇気を持ってイザークに求婚するカタリーナ

愛して尊敬するイザークと妹のフリデリーケの窮状を救うためにイザークに求婚したカタリーナに、イザークは結婚は慈善事業ではないと断ります。たやすい道を選ばなかったイザークは立派ですが、結婚を断られても病の床にあるフリデリーケを支え続けたカタリーナも素晴らしい女性でした。男と女の関係は理屈で語れるものではありませんが、カタリーナのことはかえすがえすもったいなかったです。余計なおせわですがイザークは女性を見る目がありませんよね。その後の女性遍歴、といってもたった二人ですが、ほら見たことかになりました。

ヤーン殺害の後もアネロッテの悪夢のような告白の後も、精神的に追い詰められたユリウスが助けを求めたのはイザークでした。ユリウスのイザークへの友情と愛情の差は紙一重だったと思います。

 

ユリウスが女の子と知ってから
日々、想いをつのらせるイザーク

ウィーン音楽院で学ぶイザークに影響を与えた人物が二人いました。一人はラインハルト・フォン・エンマーリッヒ。作曲科の上級生でイザークの演奏を「ヘンデルを酒場で聴いた気分だ」と言い切ったのです。今や教授陣でさえ聴き分けられないイザークのタッチをほんの僅か聴いただけで見抜いたラインハルトにイザークは驚愕しました。イザーク自身が気付いていない才能を見抜いていたのもラインハルトで、彼はイザークがヴィルヘルム・バックハウスの演奏を聴くように仕向けます。果たしてイザークバックハウスのベートーベンに衝撃を受け、彼が弾くベートーベンは生涯イザークの目標になります。

ラインハルトとバックハウスは、イザークが追求するべき目標を示してくれました。バックハウスとはその後も交友が続きますが、超イケメンのラインハルトは継母と密通。実の弟のように可愛がっていた継母の連れ子に射殺されます。ラインハルトはイザークの将来のためにエチュード(練習曲)を遺してくれましたが、生きていてくれたらイザークの音楽の世界はさらに広がったのではないかと思います。エチュード(練習曲)は難易度が高く、ショパンの「革命」「木枯し」「黒鍵」のエチュードは難易度A〜F段階の最高難度Fに属します。

 

      バックハウス ラインハルト        

デビューして名声を得たイザークの成功も長くはつづきませんでした。第一次世界大戦に招集され、兵役から戻ってすぐに指が動かなくなったのです。演奏家としての活動は無理でも音楽院の教授の道がありました。多くの生徒が彼の指導を熱望していたのに彼は断ってしまいます。経済的に困窮してロベルタが苦労する姿にフリデリーケが重なりました。イザークは才能あるピアニストでしたが生活力がない人でした。もともと贅沢には興味がない人でしたが。

レーゲンスブルクに帰ってからはコンチェルトやソナタを作曲しているようです。いつか再び日の目を見るときが来て欲しい、ユーベルの演奏で、と願っています。

気になるのは時々女性に手を上げることです。わたしが気が付いただけでも妹フリデリーケの頬を2回叩いています。1回目はモーリッツには会っていないと嘘をついた時、2回めは酒場でピアノを弾いていることをフリデリーケが責めたときです。イザークは僕らの父さんを侮辱するのかと怒りました。婚約者とパリから帰ったアマーリエを思い切り引っ叩いたこともありました。殴り倒すほどの凄まじさで、アマーリエには全然同情しませんでしたがちょっと怖かったです。3回ともそれなりの理由がありますが温厚なイザークだけに驚きでした。やんちゃなクラウスでさえも女性に手を上げることはなかったと思います。

ところで、イザークはロベルタを愛していたのでしょうか。イザークはロベルタが収容されている更生施設で、結婚したら彼女はすぐにでも出所できると聞き、ロベルタとの結婚を決意しました。カタリーナのプロポーズに結婚は慈善事業ではないと答えた彼の言葉と矛盾します。

 

オルフェウスの窓の悲劇とは?

ユリウスとの恋は実らなかったので悲劇はなかったように見えますが、ユリウスを愛したイザークは、ほかの女性を心から愛することができなかったように思います。アマーリエとのことは、まだ18歳だった彼が舞い上がって愛情と勘違いした・・・と私は信じています(笑)。

近い将来、カタリーナがレーゲンスブルクに帰ってきてイザークと再会。イザークはようやく彼女との愛に目覚め、ダーヴィトとマリア・バルバラのようにしあわせに・・なんてことになったら嬉しいです。

ダーヴィト&マリア・バルバライザーク&カタリーナ、そこにモーリッツ夫妻とユーベルが加わり楽しい会話が聞こえます。なんてすてきな光景でしょう!

 

イザークとロベルタの息子ユーベル
イザークとロベルタの結婚式