ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

オル窓とわたし ① 80年代のレーゲンスブルク

ドナウ川にかかる橋から見たレーゲンスブルクの街並み

この作品の存在を知ったのは80年代半ばでした。「ベルばらの作者によるロシア革命を背景に描かれた壮大なストーリー」といった感じの記事を読んで即、渋谷の漫画専門店で18巻全巻を購入。1巻360円でした。ベルばらでフランス革命の歴史を制覇?し、その後、聖書物語と三国志も漫画で制覇。さあ今度は複雑なロシア革命を大好きな池田理代子さんの作品で即、制覇!・・・とはいかなかったのです。まず、ストーリーが長~い、ト書きの情報量が半端なく多い、時々難解な言葉や表現が出現するなどなど、漫画で辞書を引いたのは初めてでした(笑)。

レーゲンスブルクのことは子どもの頃から知っていました。ドイツからのお土産でバイエルン州の写真集をもらったからです。州都のミュンヘンと有名なお城や教会の写真のほかに古都レーゲンスブルクの夜景とドナウ川の写真があり、とても美しかったことを憶えています。オル窓の舞台がレーゲンスブルクと知り、何か運命的なものを感じました。

若かったわたしはクラウスに夢中になり、レーゲンスブルクに憧れ、寝ても覚めてもオル窓で、とうとう一人でレーゲンスブルクまで行ってしまいました。まだインターネットが普及していない時代だったのでオル窓とレーゲンスブルクの関連情報はゼロ。ミュンヘンに到着してすぐにホテルのコンシェルジェでレーゲンスブルクへの行き方と電車の時間を調べてもらいました。ホテルマンに「女性はロマンチック街道(The Romantic Road)がお好みなのに最初の観光にレーゲンスブルクとは珍しい」と言われる始末。レーゲンスブルクの街が世界遺産に登録される前だったのでホントに珍しかったようですが、オル窓の話をしたところで・・。ドイツ語の読みにくい地図と必要な情報をもらって翌日に備えました。

 

車窓から。ミュンヘン郊外の牧場。のどかな風景が続きます。

朝一でミュンヘン中央駅を鈍行電車で出発。まずはクラウスが飛び降りた鉄橋を見なくては!ガラガラの車内でわたしはカメラを構えて窓に張り付き一歩も動かず、胸はワクワクでした。が、約2時間の電車の旅は鉄橋を見ないうちに終点のレーゲンスブルク駅に到着・・えっ? 鉄橋どころか川もありませんでした。(帰りも確かめました)わたしが愛してやまない、クラウスがストラディヴァリに別れを告げたあのセリフがわたしの頭の中で空回りしていました(笑)。

気を取り直してレーゲンスブルク駅を出ると、緑の木々がわたしを迎えてくれました。左側は公園でしたが平日のせいか誰も居ません。曇り空だったので木が茂っている奥は薄暗く、一人で奥まで行く勇気がありませんでした。がんばってもっと散策していたら、あるいは好天に恵まれていたら、イザークがオーケストラと皇帝を弾いたケプラー・モニュメントを見つけたかもしれなかったのに・・。

レーゲンスブルク駅の中央口を出て左方向に歩くと、左側にマクドナルドがありました。現在は違うファストフード店になっているようです。ビックマックは呼び名も味も世界共通。てことで早めのランチはマックでした。レーゲンスブルクまで行って何故マック? あの時は何かを聞こうにも街を歩いている人がほとんどいなくて、いても言葉が通じなかったりで、マックの看板にホッとしたのです。

マクドナルドを通りすぎて散策した場所が聖ゼバスチアンのモデルとなったお城のすぐ近くだったことを20年後に知りました。当時は情報がなかったので知らずじまいでホントに残念です。とにかく学校のモデルとなる建物があるかもしれないと歩きまわっていました。聞いたところによると、現在、レーゲンスブルク大学の図書館には「オルフェウスの窓」の全巻が置かれているそうです。オル窓目当ての観光客が増えたのでしょうか。だとしたら、観光案内所で「オルフェウスの窓」のゆかりの場所を案内してくれるかもしれませんね。

レーゲンスブルクはまだ9月というのに寒かったのでセーターでも買おうとホテルマクシミリアンの先にある洋品店に入りました。ミュンヘンと違い、この町では英語がまったく通じません。困っていると若い女性の店員さんがちょっと待ってという仕草をして走り去り、間もなく美しい中年の女性と一緒に戻ってきました。アルラウネのように美しいその女性はきれいな英語で話しかけてくれました。わざわざ隣の店から来てくれたそうです。たった2千円のセーターと千円のレッグウオーマーを買う間ずっとわたしに付き添ってくれました。別れる時は電話番号を書いたメモをくれて困ったらいつでも私に電話をしてと言ってくれたのです。わたしは感激でうるうるして、それまでのがっかり感はすっ飛んでしまい、レーゲンスブルクが大好きになりました。

千円で買ったレッグウォーマー。さすがドイツ製、30年以上経っても現役です。

小さな個性的な店が並ぶ商店街は人通りが少なく、店は大丈夫なのかと心配しましたが、2006年に世界遺産に登録されてからは賑やかになったようです。世界遺産というブランド力はやっぱり凄いですね。

大聖堂とドナウ川へは駅から歩いて行けます。ドナウ川には12世紀に建造されたドイツ最古の石橋があり、その橋を渡った向こう側からみた大聖堂と街並の美しさは感動的でした。ユリウスやクラウスもこの景色を見ていたんだろうなと想像しました。ドナウ川というとシュトラウスの「青きドナウ」を思い浮かべますが、天気が悪かったせいかドナウの水は茶色で濁っていました。後で聞いたのですが、いつも茶色だそうです(涙)。

ドナウ川とドイツ最古の石橋。橋としてしっかり機能しています。

大聖堂の東門の前にある広場に野菜と食料品の小さな市場があり、あっ、フリデリーケたちの市場と叫びそうになりました。原作の絵を見ると大聖堂の2本の尖塔が見える場所で尖塔と市場の間には建物があります。大聖堂広場に続くここ旧穀物広場には昔から市場があったようで、わたしは、フリデリーケの野菜売り場はここにあったと勝手に断定しました(笑)

 

大聖堂の裏手。右手前の黒いテントの屋根が市場。

大聖堂・旧穀物広場にあった野菜・食料品市場。

現在の旧穀物広場。30年経っても景色が変わらないのがすごい。

 

撮影 (最後の画像を除き) ORIHIME