ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

知っているようで知らない論語 ⑦ 勇者は懼れず

 

知者は惑わず ちしゃはまどわず

仁者は憂えず じんしゃはうれえず 

勇者は懼れず ゆうしゃはおそれず

 

知識と見識を持つ者は判断力があり迷わない。

私利私欲のない者はやましいところがないので気後れすることがない。

勇気ある者は何事にも恐れることがない。

 

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勇気ある者は恐れない

映画界の闇に立ち向かったローナン・ファロー

彼⬇️はただのイケメンくんではありません。15歳で大学を卒業した神童は弁護士資格を持つ社会派のジャーナリストになりました。彼は長年誰も手をつけることができなかった映画界のタブーに立ち向かい、30歳でピューリッツアー賞を受賞しました。

🟪 女優、女性スタッフへのセクハラを30年に亘り繰り返していた映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン

この事件は記憶に新しいと思います。彼は、映画「イングリッシュ・ペイシェント」「グッドウイル・ハンティング」「ロード・オブ・ザ・リング」「英国王のスピーチ」などの名作を数多く世に送り出した辣腕プロデューサーであり、独立系配給会社最大手ミラマックスの創設者でした。映画界の「パワー」の頂点にいた彼は配役をちらつかせて女優に性的関係を迫り、従わない女優には役を与えないように働きかけていたのです。彼の映画に関わった俳優、監督、製作関係者はこの事実を知りながら、保身のために見て見ぬフリをし続けました。

ワインスタインはアカデミー賞の常連でしたが、そこにも裏工作が・・

🟪 ワインスタインを映画界から追放したスクープ記事

2017年10月、ニューヨーク・タイムズ紙が、ワインスタインから性被害を受け、示談金でその事実を揉み消されたとする女性8人の証言を実名で報道。その5日後、ニューヨーカー誌がローナンの取材記事を掲載しました。セクハラ被害者20人の証言とワインスタインの強要を拒否して仕事が激減したとする女優たちの証言をそれを裏付ける情報とともに公にしたのです。続いて、実名で告発した女性たちの勇気に触発された被害者たちが続々と名乗り出て大騒ぎになりました。その中には人気女優、グウィネス・パルトローアンジェリーナ・ジョリーの名がありました。この騒ぎは♯MeToo運動に火をつけ、映画界を超えてメディア、政界、法曹界のセクハラ事件の摘発に発展したのです。

翌2018年、これらの報道によりニューヨーク・タイムズ紙と2人の女性記者、及び、ニューヨーカー誌とローナン・ファローはピューリッツアー賞報道部門公益賞 (Journalism "Public Service") を受賞しました。

ほとんどの訴えが時効を過ぎていて裁判の対象は2件だけでしたが、2018年、ニューヨーク最高裁は67歳のワインスタインに禁固23年の刑を言い渡し、2023年にはロサンゼルス地裁が禁錮16年を上乗せする判決を下しました。

🟪 ローナン・ファローの功績

ワインスタイン事件では、ニューヨーカー誌とローナン・ファローは先に報道したニューヨーク・タイムズの陰に隠れがちですが、ローナンは女性達の告発だけではなく、被害者や都合の悪いジャーナリストを沈黙させるワインスタインの悪辣な手口を明らかにしました。ユダヤ系のワインスタインはイスラエル諜報機関モサドの元工作員たちを雇い、ワインスタインにとって不都合な人物を監視させました。その人物が掴んだ情報を高値で買い取ってお蔵入りにしたり、その人物のスキャンダルを握って沈黙させたのです。ローナン自身も無言電話や脅しの警告を受けました。

弱みを握って抹殺することを英語で「キャッチ&キル」と言うそうです。ローナンはそれをタイトルにした彼の著書で、 セクハラとキャッチ&キルが映画界だけでなくメディア、政治、法曹の世界にも浸透しているとし、トランプ氏のスキャンダル揉み消し工作についても書いています。

タブーだった闇に深く切り込んだローナンの正義感と勇気は全米で賞賛され、彼の著書「キャッチ&キル」はタイム誌、ワシントンポスト紙、フォーチュン誌の年間ベストブックに選ばれてベストセラーになりました。

🟪 ローナン・ファローの驚きの経歴

ローナンは15歳でバード大学(コロンビア大学と分離した大学)を卒業。学位は哲学と生物学でした。16歳の時ユニセフの奉仕活動を始め、18歳でイェール大学に入学。法科で学び弁護士の資格を取得後、政府の仕事に就きました。オバマ政権下で外交のためのスピーチライターを務め、2011年、国務長官ヒラリー・クリントンに請われ、世界の青少年問題の特別顧問を務めたのです。

ジャーナリストを目指したローナンは政府を去り、ローズ奨学生としてオックスフォード大学で政治学の博士号を取得しました。帰国後、MSNBC (マイクロソフトNBCが共同で設立したニュース専用の放送局)のジャーナリスト兼キャスターとしてワインスタインの取材を敢行。ところがNBCが放送を許可しなかったため、ローナンはクビを覚悟でスクープをニューヨーカー誌に持ち込みました。NBCにはワインスタインの圧力があったと言われ、屈したNBCは視聴者から激しい非難を浴びました。

ローナン・ファローは映画監督ウディ・アレンと女優ミア・ファローの実子です。ユニセフの親善大使として精力的に活動していた母ミアの影響もあり、ローナンは16歳から8年間、イェール大学に入学後もユニセフの青年広報担当を務め、アフリカ中を旅して周りました。スーダンを訪れたときに重い骨の感染症を発症し、4年間の車椅子生活を余儀なくされましたが任務は最後まで全うしたそうです。

🟪 男を上げたブラッド・ピット

俳優、監督、映画関係者がワインスタインの暴挙を見て見ぬフリをして口をつぐんでいた中、1人だけワインスタインに立ち向かった俳優がいました。若き日のブラッド・ピットです。彼は、当時ガールフレンドだったグウィネス・パルトローがワインスタインからセクハラを受けたことを知りました。パルトローによると、ブラッド・ピットはワインスタインの胸に指を立てて「オレの彼女に二度と手を出すな」と言い切ったそうです。まだスターの手前だったピットには大きなリスクがあったのに、かっこいいですね(^^)

論語出典  

 

参照:  "INSIDER"、"SCREEN" 、" FRONTROW" 、Yahooニュース「LA在住ジャーナリスト猿渡由紀さんの記事」、Wikipedia "Ronan Farrow" English version、文春オンライン、AFP BB news