ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

日本画展🔹🔹印象に残る作品

 

若者の鑑賞者がグーンと増えた日本画

今月鑑賞した「富士と桜〜北斎の富士から土牛の桜まで」於: 山種美術館では、さまざまな富士山と桜を見ることができました。驚いたのはお客さんの過半数が20代前後の若者だったことです。ここ数年若者の鑑賞者が増えてはいましたが、過半数とは・・嬉しいことです。若者に人気の伊藤若冲を通じて日本画に馴染む機会が増えたとか、或いは日本画と西洋画の境目がなくなってきたことが影響しているのでしょうか。日本画の奥深さや日本画独特の画材の繊細さに興味を持つことは素敵なことと思います。

日本画の定義: 「日本画」と「西洋画」の違いは、大雑把な言い方をすれば、描くために使用する素材の違いということになります。その画材となるものも歴史に培われた伝統的な素材です。一般には紙や絹、木、漆喰などに、墨、岩絵具、胡粉、染料などの天然絵具を用い、膠(にかわ)を接着材として描く技法が用いられています。また、金などの金属材料(金箔など)を画材として効果的に取り入れています。日本画用材料は決して扱いやすいものではなく、また、その技法を習得するにも時間と根気が要ります。(山種美術館のHPより)

 

ここ数年観賞した日本画展で印象に残っている作品をあげてみました。

 

🔹川﨑春彦『霽るる』1977「富士と桜」展 山種美術館 2023年

画伯は父も兄も日本画家で義兄が東山魁夷。三人から指導を受けました。「富士と桜」展では北斎、広重、横山大観ほか大御所揃いで「赤富士」など有名な作品が多かったのですが、私はこの『霽るる』(はるる)のインパクトの強さに足が止まり、しばらく動けませんでした。

 


🔹奥村土牛『醍醐』1972
「富士と桜」展 山種美術館 2023年

土牛画伯が83歳の時の作品です。この有名な桜の絵は以前から好きでしたが、本物は想像以上に素晴らしく、気持ちを穏やかにしてくれます。毎日見たいと思いました。

 

🔹上村松園『牡丹雪』1944上村松園・松篁〜美人画花鳥画の世界」展 山種美術館 2022年

京都の葉茶屋に生まれ、京都の芸術学校で学んだ女流画家。画伯は美人画の大家で、女性として初めて文化勲章を受賞しました。洗練された筆使いが美しく、広い空のスペースと人物とのバランスがオシャレです。

 

🔹上村松篁『白孔雀』1973上村松園・松篁〜美人画花鳥画の世界」展 山種美術館 2022年

松篁(しょうこう)画伯は松園画伯の息子。松園はシングルマザーとして松篁を育てました。松篁は花鳥画を描くために度々外国に旅をしました。母親と同じく文化勲章を受賞し、松篁の息子も日本画家の上村淳之です。この作品には繊細な美しさがあり、長いヴェールのウエディングドレスをまとった気品あるプリンセスの化身のようです。

 


🔹鳥居清長『六郷渡船』1784
「日本三大浮世絵コレクション」展 東京都美術館 2020年

展覧会には北斎、広重、菱川師宣歌麿写楽など60名の浮世絵の代表的絵師たちの作品450点が出品され、うち約100点が重要文化財でした。出品数が多い上にかなりの混雑で疲れきってしまいました。この作品の女性たちのプロポーションに目が行きました。背が高く、座り方も現代風です。鳥居画伯は浮世絵師のトップ六人に入る大家で、外国でもよく知られているそうですが私は知りませんでした(^^;;

 

🔹手塚雄二『おぼろつくよ』2012「光を聴き、風を視る」展 日本橋高島屋SC 2019年

「月夜」は「つくよ」とも読みます。手塚画伯は現代日本画家のトップランナーで師匠は平山郁夫画伯です。自然の音を聴いて見えない風を見る、つまり見えない自然を感じて視覚化するということでしょうか。おぼろ月の淡い光が木々にさまざまな色彩をもたらしていて幻想的です。手塚画伯の絵は着物柄にも使われていて、会場に展示されていましたがおしゃれでした。

 

🔹山口蓬春『新宮殿杉戸楓4分の1下絵』1967「皇室ゆかりの美術」展 山種美術館 2018-2019年

1968年、皇居新宮殿が完成。伝統と文化を象徴する新宮殿には、国内外の来賓を迎えるために優れた日本の美術品が飾られました。山口画伯は現東京芸大で西洋画を学んだ画家で、常に新しい日本画を模索していました。戦後、ジョルジュ・ブラックアンリ・マティスといったフランス近代絵画の解釈を取り入れてモダンなスタイルを確立したそうです。納得です。この作品は日本画・洋画ジャンルレスでとにかくかっこいいです(^^)

 

🔹小澤華嶽『蝶々踊図』1839「横山華山 KAZAN」展 東京ステーションギャラリー 2018

横山華山の展覧会には彼の弟子たちの作品もありました。その一人が小澤華嶽です。このチョウチョ踊りは豊年踊りとも呼ばれていて、コスプレした町の人々が踊り狂う日本版ハロウィンですね。タコ、カエルなど仮装力がハンパなく、大根の仮装には笑ってしまいました。当時の楽しい祭りの様子が伝わってきました。

 

🔹東山魁夷『緑響く』1982「 生誕110年 東山魁夷」展 国立新美術館 2018年

あまりにも有名な作品ですが、本物を生で見た時に感じたことは「完璧な静寂」でした。時間が止まり異次元にいるような感覚で、白馬は孤独な自分でした。現実の世界にいるのか、それとも水鏡に映った幻の世界にいるのか分からなくなった自分です。優れた芸術は感動を与えてくれますが、時には心の奥まで入り込む危険さがあると思いました。

『緑響く』のモチーフとなった長野県茅野市(ちのし)の御射鹿池(みしゃかいけ)。小さな農業用のため池ですが息を呑むほど美しいそうです。

🔹東山魁夷『濤声』1975生誕110年 東山魁夷」展 国立新美術館 2018年

唐招提寺御影堂の襖絵『濤声』(とうせい)。東山ブルーが岩に打ち寄せる白い波と美しくマッチしています。じっと見つめていると波の音が聴こえてきました。

美術館の広いスペースに展示された実際の襖。十数枚もの貴重な襖の運搬は大変だっただろうと思いました。襖絵をゆっくり鑑賞できるように、とい面の壁際には椅子がずらりと並べられていました。唐招提寺で実際に見ているような気分になれた至福の時でした。

ご覧いただきありがとうございました。

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