ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

知られざるハンガリーの名匠たち 〜 ブダペスト展

 

東欧は芸術の宝庫

 

西ヨーロッパに比べ、見聞きする機会が少ない東ヨーロッパの芸術

東欧各地を廻った音楽家の友人が、東欧の人々は芸術を愛し、彼の地は音楽も絵画も芸術の宝庫と言っていました。名もない地方オーケストラのレベルが半端なく高く、美術館には知られざる名画が溢れていて各地を巡るのが楽しくて仕方なかったとか。プラハでバイオリンケースを持ってカフェに入ったら、店の主人が「出世払いでいいから頑張れ」と料金を取らなかったそうです。彼はアラフォーでしたが日本人は若く見えるので20代に見えたのでしょうね。素敵な話です。 

 

六本木の国立新美術館で開催中の「ブダベスト展」に行ってきました。展示作品は彫刻を含め130点。モネ、ルノアール、コロー、ピサロクールベシニャックグレコロダンなど馴染みの巨匠たちの作品もありましたが、それらに優れど劣らぬハンガリーの画家たちの作品に見入ってしまい、観覧1時間の予定が3時間になりました。私にとっては初めて見知った画家ばかりでしたが、彼らの作品の素晴らしさに驚きと感動の連続だったのです。

 

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展覧会のシンボルとなっている冒頭の作品はシニェイ・メルシェ・パール紫のドレスの婦人」油彩 1874年。ハンガリーは日本と同じく姓が先にくるのでシニェイ・メルシェが姓でパールが名前です。画家は貴族の生まれで、ミュンヘンの美術学校で絵画を学びました。紫のドレスの美しい婦人は画家の新婚の妻で、当初はドレスの色が濃過ぎると不評でしたが、今は「ハンガリーモナリザ」と言われる国民的な作品です。

 

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シニェイ・メルシェ・パール ヒバリ」油彩 1882年。主人公は緑の草むらに横たわる全裸の女性ではなく、広い青空でも白い雲でもありません。注意深く見ないと見逃してしまいそうなヒバリです。うららかな昼下がり、春を告げるヒバリの鳴き声が聞こえてくるよう作品ですが、当時、神話に登場する女性以外の裸体は不道徳だと酷評されたそうです。これより20年前にマネが発表した「草上の昼食」も、全裸女性の描写が一大スキャンダルになりました。画家としての自信を失くしたシニェイ・メルシェは筆を断ち、貴族の議員として活躍。その後、画家に復活した稀有な経歴の持ち主です。

 

 

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ロツ・カーロイ「春ーリッピヒ・イロナの肖像」油彩 1894年。何て美しい女性でしょう。楚々とした可憐さは西洋画で多く描かれる肉感的な女性と異なり、東洋的な草食系という感じです。そういえばハンガリー人はアジアの遊牧民を祖とするアジア系人種です。ロツ・カーロイはブダペストとウイーンで活躍した後、ブダペスト美術アカデミーの教授になりました。

 

   

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マルコー・カーロイ(父)「魚師たち」油彩 1851年。その古典的な雰囲気と荘厳な美しさに目を奪われました。ローマ郊外の風景画で有名な17世紀のフランスの画家、ロランの「小川のある森の風景」が脳裏に浮かび、解説を読む前はロランと同時代の画家かと思いました。東欧では現在のドイツやオーストリアで美術を学ぶことが多かった中、マルコーはイタリアで学んで成功したそうです。(父とあるので子を探したのですが見つけられませんでした。マルコーが姓なのでロツ・カーロイとは関係ありません)。

 

 

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チョントヴァーリ・コストカ・ティヴァダル 「アテネ新月の夜、馬車での散策」油彩 1904年。何故か心を引かれ、しばらく見つめていました。どこがどう良いのか説明できないのですが、とても好きな作品です。チョントヴァーリは調剤学、化学などを学んだインテリの薬剤師で、啓示を受けて画家を志し、薬剤師として働いて旅費を稼いで絵画を独学で学んだそうです。生存中は全く評価されず、狂気と失意のうちに世を去った彼の晩年はゴッホに酷似しています。

 

 

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ムンカーチ・ミーハイ 「ほこりっぽい道II」油彩 1874年。西欧風に呼ぶとミヒャエル・ムンカーチ。パリで成功したハンガリーが誇る近代絵画の巨匠・と言っても、私は彼を知りませんでした。一瞬で引き込まれて釘付けになった作品です。間近で見ると、御者と馬はどちらも一筆滑らせただけで描かれたように見えます。離れて見ると、必死に手綱を握る御者と懸命に走る馬がリアルに動いていて、もうもうと土煙りをあげて迫り来る馬車の迫力と臨場感に圧倒されます。この作品が放つパワーの凄さを私の言葉では表現できなくて残念です。 

 

どの作品も素晴らしく充実した3時間でした。新型ウイルス対策のため、しばらく閉館となり残念です。