ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

多言語で歌われて愛されている名曲 〜 ゴッドファーザー

映画「ゴッドファーザー」から"愛のテーマ"

何度も見た映画ゴッドファーザー」。ストーリー、キャスト、映像、すべてが素晴らしく、中でもニーノ・ロータの音楽が格別でした。以来、ニーノ・ロータは私のレジェンドです。「愛のテーマ」を聴くとシシリアの美しい風景とコルレオーネ・ファミリーを取り巻く愛憎劇が脳裏に浮かびます。実は、この「愛のテーマ」が映画の主題曲だとばかり思っていたのですが、そうではなかったことを今回初めて知りました。主題曲はドン・コルレオーネが移民としてニューヨークに到着した時と彼とアメリカを結びつけるシーンに流れる、あの哀愁に満ちたワルツです。

 

🎈歌の英語タイトルは「Speak Softly, Love」(恋人よ、そっと話して)

YouTubeたまたまこの曲のチェコ語版を発見しました。タイトルそのままに静かに歌う女性歌手の歌が魅力的で聴き入ってしまいました。次いで見つけたカウンターテノールのイタリア語版では圧倒的な歌唱力に感極まって涙しました。そこでさまざまな言語の歌唱を聴いてみました。この歌はアンディ・ウイリアムスの歌で大ヒットしましたが、映画のサウンドトラックは歌なしのインストルメンタルです。

 

ウクライナ

タイトル「Speak Softly, Love」 

歌唱 : ソフィーヤ・ラターロ  Sofia Rotaru  〜 ロシア、ウクライナ両国で人気の美貌の歌手。ソ連時代のウクライナキエフ出身。女優としても活躍し、数多くの映画に出演しています。この映像は1975年に主演したミュージカル映画からの抜粋です。


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イタリア語

タイトル「Parla piu piano」(Speak softly)

歌唱: チェザル・オワトゥ Cezar Ouatu 〜 ルーマニア出身のカウンターテノール。彼は母国の芸術大学でピアノと合唱指揮の学位を得た後イタリアに渡りミラノ音楽院を卒業、ヨーロッパで活躍しています。父親はフルート奏者で生前モーツァルトの生誕地ザルツブルグのモーツァルテウル音楽大学(世界的に有名な歴史ある総合芸術大学)で教鞭をとっていました。画像はチェザル本人です。マイケル(アル・パチーノ)に似ていますね。


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チェコ語

タイトル「Sen Iasky」(A Dream of Love)

歌唱: イヴェタ・シモノヴァ Yvetta Simonova 〜 オペレッタの歌手として活動を始め、その後ミュージカルからポップスに範囲を広げていきました。名門カロウブラハ管弦楽団で、デュエットの相手役ミラン・クラディオ(この画像の男性)とともにソリストを務めた国民的歌手です。2017年、シモノヴァの音楽芸術への貢献に対し、大統領功労勲章が授与されました。


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ロシア語

タイトル「ТРИ СЛОВА」(3つの言葉) 

歌唱: エミル・グロヴィエッツ   Emil Gorovets 〜 ユダヤソ連ウクライナ人。彼はテノールバリトンの中間の位置する明るい音色と繊細な表現力で一世を風靡した著名な歌手です。1960年、ソ連邦で最も優秀なエンタテイナーを選出する全国コンクールで優勝。東ヨーロッパのユダヤ人の言語イディッシュ語ウクライナ語で歌い、欧米のヒット曲をロシア語で歌いました。70年代、ユダヤの歌が禁止されたソ連を離れてアメリカに移住。ソ連が崩壊しつつあった1989年、再びモスクワの地を踏み大歓迎され、イスラエルでも人気を博しました。曲のタイトル「3つの言葉」はおそらく "I love you" です。ロシア語を調べてみたら"я тебя люблю" で3 wordsでした。


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英語 レゲエ版

タイトル「Speak Softly, Love」

演奏/歌唱 イナ・デ・ヤード&ケン・ブース Inna di Yard & Ken Boothe 〜 レゲエ・シンガーのレジェンド、ケン・ブースを筆頭にジャマイカを代表するミュージシャンたちで構成されたアコスティック音楽ユニット。ブエナ・ビスタ・ソーシャルクラブのジャマイカ版です。演奏も歌も心地よいリズムでカッコいいです。ジャマイカ公用語は英語ですが、フランス語、スペイン語などが混じった現地の言葉も広く使われているそうです。

 

 

英語 

タイトル「Speak Softly, Love」

歌唱: シモーネ・イーリス  Simone Egeriis  〜  天使の歌声の持ち主、シモーネは1992年にデンマーク生まれました。彼女は、デンマークのテレビ番組が主宰する音楽コンテストのジュニア歌唱部門で優勝。以来国民から「シモーネ」と呼ばれて愛されている歌姫です。この映像の歌は、シモーネが18歳の頃にレコーディングしたものと思われます。


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日本語版

タイトル「ゴッドファーザー・愛のテーマ」

訳詞 千家和也 歌唱 尾崎紀世彦

欧米の言語の歌詞を訳して日本語の歌詞として成立させるのは至難の業です。欧米の言語は1つの音符の上に単語を1つ載せることができますが、日本語は音符1つに1文字だけなので同じ小節数の情報量が圧倒的に少ないのです。リズムも違ってきて、日本語は間延びした感じになってしまいます。「ドレミの歌」の日本語版と英語版を同じ小節数で比べてみました。

日本語の歌詞//英語の歌詞

ドはドーナツのド

Doe, a deer, a female deer (ドウは鹿、メスの鹿)

レはレモンのレ 

Ray, a drop of golden sun (レイは輝く太陽から降り注ぐ光線)

ミはみんなのミ 

Me, a name I call myself (ミーは名称、私が私自身を呼ぶ時の)

 

千家和也さんの歌詞はそんなハンディを吹き飛ばし、オリジナルの英語版に勝れど劣らずゴッドファーザーの世界観を感じさせてくれます。歌唱は20世紀最高の歌手、尾崎紀世彦さん。


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バック演奏の編曲と演奏も魅力的!

歌唱は勿論ですが、それぞれのバック演奏のアレンジと楽器編成にも興味深いものがあります。ギターやマンドリンをフューチャーしていたり、ピアノとリズム楽器だけだったり、現代版ではシンセサイザーが大活躍だったりと、バック演奏もおおいに楽しめました。

🎈どうでもいい豆知識 〜 バック演奏者やバックバンドを英語では「Backup musician(s)」「Backup band」と言い、録音されたバック演奏を「Backing track」と言います。日本語では「カラオケ」(ヴォーカルが空のオーケストラ)ですが、これは本来の用法を超えて世界的に娯楽用語になっていますね。トラックとは録音する溝のことです。歌唱を収める溝、バック演奏を収める溝など現代では溝が幾つもあるので、弦楽器、管楽器、木管楽器、打楽器などを別々にレコーディングすることができます。歌唱も幾通りも録音できるのでベストの部分を編集で繋ぎ合わせることが可能です。生歌唱では下手な歌手がCDやDVDで見事に歌っているのはこのテクノロジーのお陰です。昔は溝が一つだったので、レコーディングは歌手とオーケストラが一堂に会して行われました。失敗できないので、歌手もミュージシャンたちも緊張したでしょうね。ちなみに口パクで歌うことを英語では「Lip-sync」と言います。syncは、合わせる、同時に動く、同期するを意味するsynchoronize (シンクロナイズ)の略です。

 

🔹🔹🔹

映画「ゴッドファーザー」は1973年、アカデミー賞の作曲賞を含むほとんどの部門でノミネートされ、作品、主演男優、脚色部門が最優秀賞を受賞しました。ですが、「愛のテーマ」の主旋律が1958年製作のイタリアのコメディ映画「Fortunella」(幸運) のサウンドトラック(作曲はニーノ・ロータ)から流用されていたことが発覚し、受賞はおろかノミネートも取り消されてしまいました。下は問題の映画音楽です。


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参照: Wikipedia=Englishi, Ukuranian, Czech and Russian versions helped by The Google Transration Serivices.