ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

ロシアの善良な人々とロシアが生んだ芸術に思いを馳せる日々 

 

プーチン政権のロシア政府は許せませんが、祖国の暴挙に胸を痛める人々、処罰覚悟で抗議をする人々、世界の国々から出場や出演を拒否されるアスリートや芸術家たち・・ロシアの罪なき善良な人々の苦悩を思うと胸が痛くなります。

子どもの頃、中国の写真集を見た時のことです。確か昔の大連だったと思いますが日本人街の入口の門に大きな看板があり、そこには「犬と中国人は入るべからず」(支那人だったかもしれません)と書かれていました。信じられなくて父親に「入るべからず」の意味を確かめたほどです。日本人はどうしてこんなにひどいことをができたの?とわたしは泣きじゃくり、日本人であることが恥ずかしくて仕方がありませんでした。今のロシアにも、あの頃のわたしと同じように、自分の国に誇りを持てなくて悲しい思いをしている子どもたちがいるのではないかと思います。

思い起こすと、わたしたちは子どもの頃からロシアの民謡や童話に親しんで来ました。ロシアはわたしの芸術の故郷です。その故郷の貴重な芸術と善良な人々が、一握りの権力者たちのために世界から疎外されていることを深く憂いています。

 

❤️わたしのお気に入り

◯わたしが一番好きな音楽家チャイコフスキーです。

◯わたしが一番好きなオペラ歌手はディミトリー・ホロストフスキーです。

◯わたしのベスト3の画家の1人はカンディンスキーです。

◯わたしのベスト3の作家の1人はプーシキンです。

◯わたしが一番好きなバレエダンサーは、女性はフランスのシルヴィ・ギエムですが、男性はユーリ・ソロヴィヨフです。ルドルフ・ヌレエフの同期でヌレエフが唯一称賛したダンサーですが37歳で亡くなりました。ジャンプの高さは、あのイワン・ワシリーエフも真っ青です(^^)

いずれも皆、ロシアが生んだ芸術家です。

 

💛わたしが気になること 

◯東京のロシア大使館は時折、大使館の一部を開放して貴重な絵画などの美術品を見せてくれます。大使館のインテリアは質素ですが重厚で、宮殿によく見る曲線の美しい大きな階段と見事な絨毯が印象的でした。

アメリカ大使館が施設の一部を開放したという話は聞いたことがありません。それどころか入口はまるで要塞で、大使館の建物を撮影しようとするとお巡りさんがすっとんできて(申し訳なさそうに)撮影をやめさせます。大連の看板が脳裏に浮かびます。そんな大使館は他になく、首相官邸でさえも撮影OKです。

 

🧡わたしが嬉しかったこと 

2002年の日韓W杯。友人が奇跡的に対ロシア戦のチケットを入手してくれました。横浜総合競技場の指定の一階スタンド席に行くと隣はVIP席でした。最高の席と喜んだのは一瞬でした。周りは外国人ばかりで青いユニフォーム姿の観客は私たち4人だけ・・エッ? そこはロシアのサポーター席だったのです🙀😱。。。席はパラパラ空いていました。チケットは友人の従兄弟がロシア人の知人から手に入れてくれたのですが、彼もロシア席とは知らなかったようです。日本戦は超プラチナチケットだったので入場できただけでもラッキーでしたが・・。

遠慮がちに応援していましたが、稲本選手がゴールを決めたときは思わず立ち上がり大騒ぎをして・・ふと我に帰って周りを見ると、ロシアの人々がニコニコしながら私たちに拍手してくれたのです🥲🥲 私たちはそれぞれの方向に感謝のお辞儀をして、その後は健闘を讃え合いました。ロシアはノーゴールだったので拍手の機会はありませんでしたが、ロシアのすてきな人々とすてきな時間を過ごすことができました(^^)

 

💜わたしが感動したこと 

アメリカとソ連の冷戦真っ只中の1958年、宇宙開発でもアメリカとデッドヒートを演じていたソ連は、「アメリカにヨーロッパの芸術が解るか」とばかりに「チャイコフスキー国際ピアノコンクール」を立ち上げました。ところが、アメリカをコケにするために創設したこの芸術祭の初回で、よりにもよってアメリカのピアニストが優勝してしまったのです。23歳のヴァン・クライバーンでした。

大会役員たちはあわてましたがロシア人の審査員たちは1位はクライバーンしかいないと頑としてゆずりません。恐る恐るフルシチョフ首相にお伺いを立てるとフルシチョフは「彼が素晴らしかったのなら優勝させるべきじゃないの」とあっさり答え、クライバーンの優勝が決まりました。

 

最終選考会でチャイコフスキーの協奏曲第1番とラフマニノフの協奏曲第3番を演奏し終えたクライバーンに、モスクワの聴衆は8分間の拍手をおくったそうです。(わたしはチャイコフスキーの1番は大好きだけど、ラフマニノフは2番の方が好きだわぁ・・アンタの好みはどうでもいいのよ!) 

 

アメリカは狂喜乱舞し、ニューヨークで行われた凱旋パレードは人で埋め尽くされました。「たった一人で鉄のカーテンを破った」とクライバーンは時の寵児となり、アメリカのマスコミに振り回されて音楽活動に専念できなくなりました。国内だけでなく海外からも演奏会のオファーが殺到しましたが、どこへ行っても、いつまで経っても、チャイコフスキーラフマニノフの協奏曲が求められ、インタビューでソ連絡みの質問ばかりでした。彼を支えてきた父親とマネージャーの死をきっかけに、クライバーンは演奏活動をやめて第一線から退いてしまったのです。

演奏活動をやめてから9年後の1987年、レーガン大統領がソ連ゴルバチョフ書記長をホワイトハウスに招き、クライバーンのリサイタルを所望したのです。クライバーンは復帰しました。

 

ロシアはクライバーの芸術性を開花させて称賛し、アメリカは芸術性よりも政治的視点に重きを置いて彼の芸術性に蓋をしてしまいました。

初めて彼の生演奏を聴いたのは、彼がカムバックした後の2003年、オーチャードホールでした。謙虚な物腰ながら力強くされど優しさに溢れた演奏でした。評論家の評価は厳しいものでしたが、もの心ついた頃から彼のアルバムを聴いて育ち、彼の一時引退の経緯を知っていたわたしは感動しました。

モスクワの聴衆を魅了したクライバーンも素晴らしいし、冷戦というシリアスな政治の壁を超えて彼を讃えたロシアの人々も素晴らしいと思います。

 

4年に一度のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが今年開催されました。大会委員会はロシアからの参加を認め、30人の出場者のうち6人をロシアが占め、銀メダルはロシアのピアニストでした。

 

🔶🔶🔶🔶

六本木〜寂しかった今年のハロウィン 

ハロウィン当日も直前の週末もコスプレ皆無。例年、コスプレの人々で賑わう交差点と交差点から東京タワー方面に向かう通りもガラ〜ンでした。

過去の六本木ハロウィンです。

 

撮影: ORIHIME

 

男と女の違い 〜 近くが見えない男


※過去記事を手直ししました。

時に分かり合えない男と女。それもそのはず、男と女は同じ行動をとろうとしても脳の活発化する場所が違うため言動や感情に違いが生じ、男性ホルモンと女性ホルモンの働きの違いが男女間のさまざまな違いをもたらします。男と女は別の生き物なのです(^^)  

かつて、「話を聞かない男、地図が読めない女」というイギリス人とオーストラリア人の夫婦が書いた本がベストセラーになりました。左脳、右脳の働きによる男と女それぞれの得意、不得意分野を実例を挙げてユーモアたっぷりに説明しています。本はロングセラーとなり、近年、新装版に続き図解付き新装版が出版されました。

 

① 近くが見えない男

古代、狩猟の時代が長く続いた結果、狩人の男の脳には獲物を探すために必要なはるか前方を見る力がプログラミングされました。一方、女は凶暴な動物から子どもを守るために、男より視野が広く、近くのものに注意を払う能力を身につけました。

男に、台所にある調味料や冷蔵庫の中の物を持ってくるように頼んでもなかなか探し出せません。しびれを切らした女が行って見ると、探し物は彼の目の前にあったりします。遠くの居酒屋やキャバクラはいとも簡単に見つけ出すのに、家の鍵など目の前にある物を見つけられない・・それが男です。


② 話を聞かない男

90年代、脳のスキャン技術が飛躍的に進歩し、イェール大学の研究班は、言葉を話す時、男は右脳が、女は左右両方の脳が活発化していることを突き止めました。左右両方の脳を使う女は同時に幾つもの作業をこなすことができますが、右脳だけを使う男はその都度思考するので一度に一つのことしかできません。

例えば、

車を運転している時、後部座席のお喋りを男は雑音としか捉えられませんが、女は会話の中身を把握できるそうです。

野球中継に夢中の男に話しかけても返事は大抵うわの空です。テレビドラマをしっかり見ながら会話を成立させられる女からすると、「彼は私より野球が大事」と思ってしまいます。

 

③ 地図が読めない女

男は狩で筋肉と右脳の空間認識能力を発達させました。村に残った女たちは共同生活を通して会得したコミュニケーション能力に長けていますが、右脳の空間認識が不得手な傾向にあります。

空間認識能力とは、物のある場所や距離を即座に把握できる能力で、地図をよんだり縦列駐車をする時に重要です。イギリスの自動車学校の資料によると、縦列駐車を完璧にできた男性は82%で女性は22%だったそうです。

ナビシステムが今ほど充実していなかった頃、助手席でナビゲートした彼女は、地図を進行方向に合わせるので曲がるたびに地図はクルクル回転しました。そうしないと方向感覚が掴めないからです。距離感も掴めず、直前に「そこ左!」と叫んで彼に叱られました(^^::  

空間能力を要する職業はパイロット、建築家、レーサーで、圧倒的に男性が多いのも納得です。

 

あなたは彼女から「私を愛している?」って聞かれたことありませんか?彼女はあなたの愛情をわかっています。じゃあ、何故?と思いますよね。左脳の言語能力が発達している女は、物事を言葉で発することで、言葉を聞くことで、より納得して安心するのです。一言でいいのです。どうか言葉に出してあげてください(^^)

 

脳科学の専門家による学術書ではありませんが、「なるほど」と納得してしまうことが幾つもあります。「話を聞かず、近くが見えない男」にも、「地図が読めず、縦列駐車が苦手な女」にも、お互いの違いが分かっていると腹も立たず、笑って済ませることができます。エンタテインメント性が高い本で楽しめました。

 

 

🔹🔹🔹🔹🔹

豆知識:カントリー音楽

カントリーミュージックというと初期のカントリーウエスタン(C&W)を思い浮かべる人も多いと思います。C&Wの泥くさい音楽はヒルビリーと呼ばれ、ロックと融合してロカビリーが生まれました。その後ダンス音楽として人気を博したカントリーは、近年、ポップスやロックとの境目がなくなってきています。カントリーロックで有名なグループはイーグルスで、CCRボン・ジョヴィオリビア・ニュートン=ジョンもカントリー曲を幾つも歌っています。最近では、16歳の時グラミー賞カントリー部門で4冠を達成したテイラー・スイフト、女性アーチストとして世界史上最多のアルバムセールスを誇るシャナイア・トゥエインらが世界の音楽シーンのトップで活躍しています。

私がカントリーに興味を持ったきっかけは、ディズニーの「アイーダ」のテーマ曲でした。エルトン・ジョンとデュエットしていたカントリー歌手リアン・ライムスの圧巻の歌唱力に驚いたのです。彼女のデビュー曲を聴いてさらに驚きました。13歳とは思えない歌唱に加え、メロディーが何故か懐かしくて心地よかったからです。聴いてみて下さい。

リアン・ライムス「ブルー」


www.youtube.com

鳥肌もの〜 バレエダンサーの肢体と身体能力 [改訂版]

 
 
過去記事を手直しして掲載します(^^)
 
優雅に踊っているように見えるバレリーナ。内実は全身の筋力をフル活動させているので僅か数分間の舞台でも袖に戻ると ぜぇぜぇはぁはぁ・・。バレエは勢いで脚をあげたり、回転したり、移動するのではなく、筋力をフルに使って身体を動かすので酸素の消費量がハンパなく多いのです。 
 
スクワットをゆっくりと数百回繰り返すほどの運動量があるバーレッスン。片手をバーに添えて、脚の屈折、足の裏表のストレッチなどウォームアップとバレエのパ(動き)に重要な基本レッスンを片脚づつ行います。続くバー無しのセンターレッスンでは各パの練習をします。子どもの頃から、メチャクチャきつ~い状態でも「は〜い、辛くても笑顔で」と仕込まれます。片脚をゆっくりと高く上げてキープするときのしんどさといったら😩😖😭〜 でも顔は😌🙂😊でなくてはいけないのです。
 
そんなレッスンを毎日何時間もこなすプロのダンサーの肢体は、レッスンで鍛えられた筋肉で護られ、しなやかでありながら鋼のように強靭です。バレエダンサーはどの分野のアスリートよりも身体能力が高いと言われています。そんなダンサーたちの美しい肢体と驚きのダンスショットを私の好みで選んでみました。シルヴィ・ギエムを除き、世界の舞台で活躍している現役のダンサーたちです。
 
 

彼はソ連崩壊の2年前、まだソ連だった頃のウクライナに生まれました。19歳の若さで英国ロイヤル・バレエのプリンシパル(最高位)に抜擢され天才と言われましたが、ご法度のタトゥーを入れたり公演をドタキャンし、昇格後わずか2年で退団。ロンドンで自身の舞台を立ち上げますがうまくいかず、その後ロシアを起点として活動していました。

退団騒動から4年後の2016年、彼のドキュメンタリー映画が話題になり、世界の舞台に戻ってきたとファンは大喜び(私も)だったのですが、崇拝するプーチンの顔のタトゥーを入れたり、同性愛者への差別発言でパリオペラ座のゲスト出演が取り消されたりと相も変わらぬ問題児ぶりを発揮。そんな状態でも世界から声がかかるのはひとえに彼のバレエが唯一無二だからです。ロシアがウクライナに侵攻した時に「衝撃だ」と発言して以来彼は沈黙を通しています。

ドキュメンタリー映画 "Take Me To  Church " で世界に復帰するも・・・

近年、舞台のほか、映画出演が多い
セルゲイ・ポルーニン
 
 

貧しくてバレエを習うことが出来なかったミスティ。13歳の時、我流でバスケットコートで踊っていたミスティをバレエ教師が見つけました。教師に引き取られたミスティは奨学金を得て本格的にバレエを始めました。
 
遅いスタートと黒人というハンディを乗り越え、世界の五大バレエ団の一つ、アメリカン・バレエ・シアターで頭角を表したミスティはタイム誌の「世界で最も影響のある100人」の一人に選ばれました。 その年、アメリカン・バレエ・シアター史上黒人女性として初めてのプリンシパルに昇格し、黒人のバレエ少女達に夢と希望をもたらしたのです。
 
身長170cm級のバレリーナが多い中、157cmと小柄ですが長い手足で伸び伸びと踊るミスティはまったく引けを取りません。2018年、ディズニーの実写映画「くるみ割り人形と秘密の王国」にバレリーナ・プリンセス役で出演。スイーツ・カヴァリエ役のセルゲイ・ポルーニンと共演しました。

タイム誌の「世界で最も影響力ある100人」に選ばれ表紙を飾ったミスティ。

ディズニー映画「くるみ割り人形と秘密の王国」の
ミスティとセルゲイ・ポルーニン

ミスティ・コープランド



タイツ姿で立っているイワン・ワシリーエフを見ると、ラグビーの選手?それとも砲丸投げ?っていうくらいのムキムキ・マンですが、ひとたび舞台に上がると、ジャンプの高さと迫力満点の踊りに圧倒されます。男っぽく力強い踊りで男性ファンが多いのも彼の特色です。友人のご主人はバレエにまったく興味がなかったのですが、バレエファンの奧さんに引きずられて初めて見た舞台がイワンの「スパルタクス」でした。彼の超人的なダンスに目が点になったご主人は、以来バレエを鑑賞するようになったそうです(^^)
 
彼はあらゆる賞を総なめにしたロシアの誇りですボリショイ・バレエ団からミハイロフスキー・バレエ団(旧称レニングラード国立バレエ)に籍を移し、各国の一流バレエ団のゲスト・プリンシパルとして引っ張りだこでしたが、今はどうしているのでしょうか。ボリショイ・バレエ団の上級ダンサー達は国のウクライナ侵攻に抗議し、次々に退団してヨーロッパのバレエ団に移籍していますが。
 

迫力満点の「スパルタクス」。特に高いジャンプは
圧巻。どのくらい高いかというと⬇️

イワンは、ローラン・プティから、プティの代表作
「若者と死」の指導を受けた最後のダンサー。

表情豊かで魅力的なイワン・ワシリーエフ

 

 

100年に一人のバレエダンサーといわれたシルヴィ・ギエムは2015年に現役を引退しました。20世紀が生んだ世界最高のバレエダンサーだと私は思っています。

パリオペラ座の芸術監督だったヌレエフがまだ19歳だったギエムのエトワール(ダンサーの最高位)昇格を宣言してバレエ界を驚かせました。容姿端麗で子ども時代に新体操で鍛えた肢体が完璧すぎる美しさであることも話題を呼びました。

私が初めて見た彼女の舞台はモーリス・ベジャールの「ルナ」でした。全身真っ白なレオタード姿のギエム以外にあるのはバッハの曲と青いライトだけ。幻想的でこれ以上美しいバレエはないと感動に浸りました。それからは、ギエムと同じ稽古着を着たり髪型を真似てみたり、シルヴィ・ギエムは私のバレエの女神になりました。

パリオペラ座は海外のバレエ団でのゲスト出演を許さなかったため、自由を求めるギエムは英国ロイヤル・バレエ団に移籍。そこでは古い伝統にこだわるロイヤル・バレエとの闘いの連続でした。「その方が綺麗だから、素敵だから」ではなく、ただ伝統だからという理由だけの振り付けに反発し、華美すぎる衣装を嫌いました。取材も受け付けないギエムは、「マドモアゼル・ノン」と呼ばれていましたが、やがてバレエファンは彼女の求めるものに共感するようになります。ギエムは伝統に縛られていたバレエ界に新風を吹き込んだのでした。

親日家のギエムは日本の文化を好み、特に陶芸を好んでいます。引退した2015年、彼女の現役最後の公演は日本でした。

「ルナ」を踊るギエム

身長172cm のスリムな身体 長い手足 バレエ
ダンサーとして理想的な肢体をもつギエム

引退公演で「ボレロ」を踊るギエム

若き日のシルヴィ・ギエム

 

🔷🔷🔷🔷🔷

"In The Middle Somewhat Elevated" 

あえて白黒で撮影したシルヴィ・ギエムとローラン・イレールのコンテンポラリーです。当時は二人ともパリ・オペラ座のエトワールでした。振り付けはウイリアムフォーサイス。私は男っぽくてキレのいいダンスを踊るイレールが好きだったので、このカップリングは最高です。音楽もパも難しい作品です。ギエムの身体能力と技術の高さをみていただけたら嬉しいです(^^)

 

 

 
 
 

それは素朴な疑問から始まリました・・ 

 

🔻テレビでゴキブリ退治の映像を見て思いました。生命力旺盛なゴキブリをあっけなく殺してしまう台所洗剤って人間に安全なの?  

🔻何ヶ月も使える化粧水や乳液ってどんな防腐剤が入っているの? 

 

20年ほど前、そんな疑問を持った私は関連する書物を読みあさりました。そして「奪われし未来」というアメリカの女性動物学者、コルボーン博士の本に出会ったのです。原題は「Our Stolen Future」。原題と邦題の素晴らしさに感動し、単純な私は内容も素晴らしいに違いないと思ったのです🥰🥰。

この本は、1950年代から報告されている世界の野生動物の生態異変から始まります。雌雄の判別ができない野生の生物が数多く確認されていました。世界中の異変のデータをジグソーパズルのように解きながら環境ホルモンとしてまとめ上げる過程は一流の推理小説のようでした。環境ホルモンはコルボーン博士が提唱したものです。

環境ホルモンとは人体の中であたかもホルモンのように振る舞い、器官の働きや生理機能を誤らせる人工の化学物質です。環境ホルモンのほとんどがエストロゲンという女性ホルモンに似た働きをします。関連するといわれる有害性は: 精子の減少、奇形の発生、生殖器系ガンの発生リスクを高める(精巣、前立腺、卵巣、乳がん)、生殖器の発育不全、自己免疫疾患、パーキンソン病、性同一障害です。本の出版から22年、博士が危惧した有害性のほとんどが立証されつつあり、事実、上記疾患や障害のリスクについてWHOが警告を発しています。

環境ホルモン、つまり内分泌攪乱の働きをする化学物質もそれが含まれるものも数え切れないほど有りますが、ここでは日常的に身の回りにあるものをとりあげます。

 

[ 環境ホルモンとされる化学物質とそれらを含む物]

♦️界面活性剤とは水と油を馴染ませて洗浄効果を促進させる物質で、合成界面活性剤は石油のカスから作られる人工の化学物質です。少量の原料で量産できるので安価な上、洗浄力が強く泡立ちやすいので満足感がありますが、自然の浄化作用で分解されず、人間だけではなく地球の生態系に影響を及ぼします。

♦️この本では、北米五大湖の工場排水が遠く離れた北極海に生息する北極熊を絶滅の危機に追いやった食物連鎖の過程を分かりやすく説明しています。今や工場排水だけではなく、大量の生活排水に含まれる化学物質が生態系を破壊しているのです。食物連鎖は野生動物だけではありません。私たち人間も、私たち自身がもたらした生態異変の魚や肉を食する食物連鎖の頂点にいるのです。

♦️環境ホルモンとされる化学物質は分子量が小さいのでいとも簡単に皮膚や血管を通りぬけます。血管に入った化学物質は各臓器に運ばれて蓄積します。自然の物質は分子量が大きいので血管内には侵入しません。お肌の奥まで・・を売りにしているナノ化粧品は危険としか思えません。

♦️石油から作られるプラスチック製品から有害な化学物質が溶け出していることが確認されています。EUではプラスチック製品への規制が厳しく脱プラスチックの傾向にありますが、日本では規制がなくプラスチック製品が溢れています。河川や海を汚し、野生の生物にダメージを与えているのは周知の事実です。驚愕の事実があります。

この本で私が一番驚いたのが、アメリカの研究機関での出来事です。従来のガラスの試験管から無菌のプラスチックの試験管に入れ替えた乳がん細胞が自然増殖することに驚いた化学者が、2年を費やしてプラスチックに使われていた合成樹脂が擬似エストロゲンの働きをして乳がん細胞を増殖させることをつきとめたのです。私たちの身の回りに溢れているプラスチック製品の化学物質が自然に溶け出しているという事実に背筋が凍りました。そして、この本は私の生涯の一冊になりました。

 

🔸以来、私は主に陶器とガラス容器を使い、電子レンジを使うときは陶器か耐熱ガラスの容器しか使いません。

🔸洗剤、シャンプー類は「純せっけん」表示のものを使っています。

🔸ハム、ソーセージ、蒲鉾などは熱湯に1分ほどつけておくと化学物質がある程度溶け出します。

🔸市販の漬物は汁を捨ててよく洗います。

🔸スープと麺が別になっているカップ麺は麺を一度熱湯につけてそのお湯を捨てます。 

 

お子さんがいらっしゃる方に: お子さんの将来の健康へのリスクを少しでも減らすために、どうか気をつけてあげてください。

 

当時、環境ホルモン、特に合成洗剤の危険性が話題にのぼったのですが、メジャーなメディアは積極的に報道しませんでした。当時の最大の広告主が洗剤メーカーだったからだと思います。事実、広告代理店の最大手、電通の一番の得意先は洗剤メーカー(花王)でした。つまり民放や大手新聞雑誌は、大スポンサー企業のダメージにつながる報道をできなかった、というか、しなかったのだと思います。

 

現在、私が懸念しているのは携帯電話やスマホの電磁波です。脳の近くまで電磁波を呼び込むスマホや携帯をひっきりなしに使う若者たちを見て、大丈夫なのかと心配になります。世界の状況を調べてみると、WHOは15年前に「電磁波過敏症」を疾患として認知しており、ドイツや北欧諸国では診療科目として保険を適用しています。日本はというと、現在のトップ広告主がキャリア(docomoSoftbankなど自社の通信施設を持つ通信業者)なので、踏み込んだ報道は期待できないですね。因みに私は7年前から体内の電磁波を放電するカードを使っています。

最新の「報道の自由度ランキング」で日本は180ヵ国中71位です。アジアの東ティモールブータン、台湾、韓国が日本のずーと上にランクされています。報道機関の広告主や政治家への忖度意識がなくならない限り、私たちは世の事実や真実を私たち自身で模索しなくてはなりません。ため息です〜😔🥺😞

 

イラスト: ILLUST BOX

 

えっ〰️ この曲 そうだったの! 童謡編

 

「えっ、この曲はもともと◯◯だったの?」って驚くこと、ありませんか?

まずは聴いてみてください。日本で育った人なら誰でも知っている歌です。

イギリスの讃美歌「主よ、汝の祝福で我らを解き放ちたまえ」です。「むすんでひらいて」とそっくりそのまま同じ曲ですよね。原曲は18世紀のフランスのオペラ『村の占師』(Le Devin du village 1752年パリ・オペラ座で初演)の挿入曲ですが、日本へは19世紀に讃美歌として伝わったようです。

メリカでは民謡「ローディーおばさんに言いに行っといで」 になったと言われていますが否定する人もいます。「年老いたガチョウが水車の池に頭を突っ込んで死んでいるとローディーおばさんに知らせに行って」とちょっと怖い内容で、驚いたことに子守唄としても使われているそうです😳 

「むすんでひらいて」の前半と同じメロディーですが、前半だけで後半がないので同じルーツだと断定するのは難しそうです。

物心ついた頃から歌っていた「むすんでひらいて」が外国の曲だったとは驚き、というより、原曲があるなど考えたこともありませんでした(^^;   もっと驚いたのが、作曲がジャン=ジャック・ルソー。18世紀の思想家ですが作曲もしていたとは知りませんでした。彼はフランス人と思っていたのですが正しくは現スイスのフランス語圏出身で、それも知りませんでした。どうでもいいことですが・・😅

原曲はこちらです。 

そのまんまですね(^^)  

 

ほかにも外国原産の童謡が幾つかあったのでアップします。どれもドイツの曲ですが、童謡のタイトル、分かりますか?

 

答え 

① 「ちょうちょ」 ドイツ版は「幼いハンス」。好奇心旺盛なハンス坊やが冒険の旅に出て7年後に成長した姿で帰ってくるという歌詞です。「ちょうちょ」とは全然ちがいます。

② 「ぶんぶんぶん」 ドイツ版も「ぶんぶんぶん Summ summ summ」。ハチよ、こっちへ飛んでこい。困らせたりしないから、野原や森を自由に飛びまれと歌っています。曲は古いドイツ民謡で作詞はドイツ国歌の作詞で知られる19世紀に活躍したホフマン・フォン・ファラースレーベン。日本でもお馴染みの「カッコウ」も彼の作詞とか。

③「こぎつねコンコン」 ドイツ版は「きつねがガチョウを盗んだ」。ガチョウを返せ、さもなければ猟銃で撃たれて血だらけになるぞ。ガチョウではなくネズミで我慢しなさい〜 と、ちょっと怖い歌詞です。

 

むすんでひらいて」ほか、どれも日本語の歌詞が自然でまったく違和感がありません。歌の意味も自然にすぅーと入ってきます。曲を生かすも殺すも歌詞次第で、半端ない作詞力を感じます。讃美歌を童謡に取り入れた発想もすごいと思いました😊

 

🔸🔸🔸🔸

クラリネットをこわしちゃった」

🔻オ、パッキャマラド、パッキャマラド、パオパオパの意味 

外国原産らしいとは思っていましたがフランスの童謡で原題は「クラリネットのドの音を失くしちゃった」という意味になります。これはドの音の出し方が分からないということで、クラリネットが壊れているわけではありません。よってお父さんはがっかりするだろうけれど、お父さんに叱られるという表現は出てきません。意味不明だったオ・パッキャマラドはフランス語で au pas (オ・パ) は一歩一歩、camarade (キャマラド) は仲間、同志という意味だそうです。これには2種類の異なった解釈があります。ひとつは、この同志とはクラリネットのことで一緒に一歩一歩前進しようとクラリネットに語りかけている・・もうひとつは、お父さんが息子に頑張って一歩一歩前へ進めと励ましている・・という解釈です。「オ・パ・キャマラド オ・パ・キャマラド オ・パ オ・パ オ・パ」はフランス語の歌詞にそのまま入っています。クラリネットの擬音かと思っていたのですが素敵な意味がある言葉だったのですね。

 

🔷🔷🔷🔷

2歳のジャイブダンサー デンマークのウイリアムくん。

両親は世界ダンス選手権ラテン部門の世界チャンピオンでダンススタジオと教室を経営しています。これは10年前の映像で公開後すぐに視聴回数が1千万を超えて話題になりましたが、YouTubeの規約に抵触する部分があるとして一時削除されてしまいました。

12歳になったウイリアムくん。今年9月にコペンハーゲンで開催されたブレイクダンスの世界大会Nordic Break League 2022 にill Will (ダンス病のウイリアム?)の名前で参加してトップ4に入りました。⬇️はトップ8に入ったときの映像です。金髪の男の子です。

 

 

 

珠玉のミュージカル曲 隠れた名曲 ④

1945年のミュージカル映画 (アメリカ)

ステート・フェアから

春の如く It Might As Well  Be Spring  

 

隠れたというより、ジャズで歌われるこの曲の"出自"を知る人は少ないように思います。ミュージカル映画ステート・フェア」のナンバーで、作詞作曲は「王様と私」「南太平洋」「サウンド・オブ・ミュージック」で知られるロジャース&ハマースタイン。日本では未公開と思っていたのですが、なんと戦後日本で最初に公開されたミュージカル映画だそうです。

もうすぐ年に一度の州の品評会ステート・フェアまだ見ぬ恋人にめぐり逢えるかもしれないとワクワクする、もともとは乙女心の歌です。歌詞に度々登場する「スプリング・フィーバー」とは春のウキウキした気分のことで、春でもないのに私はスプリング・フィーバーにかかってしまった・・まるで春のようと歌っています。

 

イギリス・ウェールズ出身のオペラ歌手、ブリン・ターフェル (バリトン)  

巨体に似合わない仕草が可愛くて指揮者も笑顔に。

歌詞が素敵です(^^)

🎶

I keep wishing I were somewhere else,

Walking down a strange new street.

Hearing words that I have never heard

From a girl I've yet to meet.

どこかの町で

見知らぬ初めての道を歩きながら

まだ逢ったことがない彼女から

僕がまだ言われたことがない言葉を聴く (恋人同士が交わす言葉)

そうなるようにずっと願っているんだ。

ブリン・ターフェルを知ったのはテレビでした。巨体でライオンの立髪のような長髪にジーンズ姿でオペラ歌手とは思えない風貌でしたが、声も歌も素敵すぎてすっかりファンになってしまいました。早速買った「Something Wonderful」というロジャース&ハマースタインのミュージカル曲を収録したCDにこの曲が入っていたのです。かつてジャズで聴いたときには特に印象に残らなかったのですが、彼の歌を聴いてこの曲が大好きになりました。それまで聴いていた曲とは全く違う曲に感じたのです。

世界最高のバリトンと思っていたら、かつて音楽コンクールで彼を負かしたバリトンがいると知りました。それが三つ前の記事「撮り損なってしまいました😱」で紹介したロシアのディミトリー・ホロストフスキーです。1989年、BBCウェールズ主催の国際音楽コンクールで優勝を争った二人。ターフェル24歳、ホロストフスキー27歳のときでした。その後二人は人気を二分し、互いにリスペクトしていたようです。

2011年、NYのプラザホテルで談笑する二人とオペラ事業関係者。

二人ともかっこよくて大好きでしたが、ディミトリーは5年前に他界してしまいました。今は亡きディミトリー・ホロストフスキー・・・残念です。

▫️▫️▫️▫️▫️

赤坂の霊南坂教会で毎週行われるパイプオルガンのコンサート。この日は、バッハのカノンとフーガでした。私はクリスチャンではありませんが時々聴きに行っています。パイプオルガンの音色は荘厳で神の声を聴いているような安らかな気持ちになれます。

撮影 ORIHIME

 

オルフェウスの窓 vs. ベルサイユのばら

当ブログに最も多くのアクセスをいただいている記事は漫画「オルフェウスの窓」に関するものです。特に人気キャラクターの「レオニード・ユスーポフ」と「年表」の二つの記事がGoogle、Yahoo 両方の検索結果のトップに挙げられ、ほかの記事も双方のトップページに入っています。アクセスしてくださった皆さま、ありがとうございます。それにしてもオルフェウスの窓」は50年前の作品で、私が一連の記事をアップしたのが今年5月です。この時期の注目度の高さにとても驚いています。オル窓ファンのブロガーさんは、「ベルサイユのばら」のアニメ化が決まったのでオル窓も注目されているのではと分析しています。

半世紀に亘り人気が衰えない「ベルサイユのばら」。映画化、宝塚の舞台化、ミュージカル化、アニメ化を経て、50周年を記念して再度アニメ化されることになりました。少女漫画史上最強の「ベルサイユのばら」の姉妹作品として熱烈なファンを持つ「オルフェウスの窓」。この二つの作品の魅力を比べてみたいと思います。

 

※ 以下、ネタバレがあります。

🔷オル窓(オルフェウスの窓)  vs. ベルばら(ベルサイユのばら)🔶

 

オル窓はベルばら人気を受けて池田理代子さんが創作した作品でどちらも主人公が男装の麗人です。物語の背景はベルばらがフランス革命、オル窓がロシア革命と共通する部分が多いのですが、一般的な知名度は圧倒的にベルばらが高く、オル窓は知る人ぞ知る作品といえます。

 

🔸ベルばらはベルサイユとパリが舞台です。前半はマリー・アントワネットを囲む宮殿の女たちの闘いなど華やかさ満載の少女漫画の世界で、後半は登場人物たちのラブストーリーと革命への道が描かれます。

🔹一方、オル窓はドイツのレーゲンスブルク、ウイーン、ロシア、再びドイツと舞台が変わる長編です。主要な登場人物が多く、多様な人間関係を見落とすと先でつまずきます。レーゲンスブルク編は音楽学校のストーリー+主人公ユリウスの生家に関わるサスペンスで、ウイーン編は音楽の世界、ロシア編では幾つもの人間ドラマと並行してロシア革命が描かれます。

 

 

🔶オスカル vs. ユリウス🔷

🔸ベルばらの主人公オスカルは代々フランス王家の軍隊を統率する貴族の名家に生まれました。男の子に恵まれず嘆いた父親はオスカルを男の子のように育てます。成長したオスカルは男装をして近衛士官となり、オーストリアから王太子に嫁いだばかりのマリー・アントワネットを警護します。アントワネットはオスカルに絶大な信頼を寄せました。

オスカルのモデルは映画「ベニスに死す」の美少年ビョルン・アンドレセン

 🔹オル窓の主人公ユリウスは愛人の子としてドイツに生まれました。貴族の父親はユリウスが生まれる前に母親を捨て、ユリウスは父なし子といじめられて育ちます。貴族の家に男の子がいなかったため母親はユリウスを男の子として育て、当主の正妻が亡くなった時、15歳になったユリウスを連れて後妻に収まりました。ユリウスは将来家督と財産を相続することになります。ユリウスは健気に男の子を装いますが実は女の子として生きることが夢でした。音楽学校に編入したユリウスは上級生のクラウス(ロシア名:アレクセイ)に恋をして女の子として目覚めていきますが、アレクセイは革命活動に身を投じるために故国ロシアに帰ってしまいます。

 

オスカルとユリウス 似ているように見えますがファンはしっかり識別できます。

🔸アントワネットスウェーデンの実在の貴族フェルゼンと恋に落ち、この恋は生涯続きました。取り巻きの夫人たちの誘いにのり贅沢の限りを尽くすアントワネットの浪費は国の財政をひっ迫させ、後に革命を誘発する一因になりますある日、民家で手当を受けたオスカルは、貴族とはあまりにも違う貧しい民の暮らしぶりを知って心を痛めます。時代が革命へと進む中、オスカルはある決心をします。

🔹ユリウスは、ユリウスの秘密を武器に母親を脅して襲いかかった闇医者を殺害します。母親と遺体を裏庭に埋めた夜は雪でした。その後ユリウスは夜の吹雪に怯えるようになります。ユリウスはピアノ科の教師ヘルマン・ヴィルクリヒから何度か殺意を感じたと母親に話します。ヘルマンはユリウスの母親がかつてオルフェウスの窓で出会った恋人でしたが、ユリウスを身ごもっていた彼女は姿を消しました。彼女は現在のヘルマンを知っていますが彼は現在の彼女を知りません。ユリウスを守るためにヘルマンに会いに出かけた母親をヘルマンはオルフェウスの窓から突き落としますが、彼女が18年間捜し続けた恋人であり、仇の妻だったと知り驚愕します。慌てて片手を掴みますが支えきれず彼は共に落ちる道を選びました。ユリウスたちは知りませんでしたが、ユリウスの父親はかつてある貴族一家をスパイ容疑で皆殺しにしました。ヘルマンはその生き残りだったのです。二人の転落死は心中事件として片付けられ、ユリウスは精神を病んでいきます。ユリウスを支えていたのはアレクセイへの想いでした。彼女は故郷を捨ててアレクセイがいるロシアに旅立ちます。

🔸オスカルはアントワネットに別れを告げ、貴族の近衛隊から平民が多い衛兵隊への異動を志願しました。荒くれ者揃いの部隊でしたが持ち前の心意気で統率し、市民に銃口を向ける軍隊から民を護ります。オスカルを愛するばあやの孫息子アンドレオスカルと初めて結ばれますが、翌日オスカルを銃撃から守って死亡。間もなくオスカルも銃撃戦で命を落とします。革命は成就し、ルイ16世とアントワネットが断頭台に消え、物語は終わります。

🔹ユリウスはロシアで記憶をなくし、レオニード・ユスーポフ侯爵邸で歳月を過ごします。ロシアに来てから8年目、記憶がほとんどないままアレクセイに遭遇したユリウスですがアレクセイへの想いだけは憶えていました。アレクセイと幸せに暮らしますがユリウスは正常な思考力を失っていました。アレクセイを愛すれば愛するほど正しい判断ができなくなり、過ってアレクセイを敵の標的にしてしまいます。最愛の人を失い完全に記憶をなくしたユリウスはレオニードの配慮でレーゲンスブルクに帰ります。腹違いの姉マリア・バルバラは何も言わずにユリウスを抱きしめました。ユリウスはある出来事をきっかけに全てを思い出して最期を迎えます。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

ベルばらもオル窓もハッピーエンドではなく悲劇で終わります。それなのにどちらも根強い人気があります。人気を支える魅力は何でしょう?

🔸オスカルは容姿人格とも優れた主人公の王道をいく主人公で、性別を超えて読者を魅了します。華やかな宮殿に渦巻く女たちの権力争いや嫉妬に立ち向かうオスカルの胸のすくような言動にワクワクします。このオスカル人気がベルばら人気の大半を占めているように思います。愛らしくて美しいアントワネットと顔も性格もイケメンの男らしいフェルゼンの切ないラブストーリーが革命の流れに組み込まれていることも忘れてはなりません。この3人の主要人物はみな悲しい最後を遂げますが、アントワネットとフェルゼンは史実なので納得するしかありません。オスカルの死はショックでしたが、意志を貫いたオスカルらしい最期でした。もし、生き抜いて生存していたアンドレと夫婦になって平凡なオンナになったとしたら、これほどの余韻は残らなかったでしょう。

🔹ベルばらファンでオル窓を知らない人がいても、オル窓ファンでベルばらを知らない人はいません。そのため、どうしてもオスカルとオル窓のユリウスを比べてしまいます。ユリウスは、意地の悪さや嫉妬とは無縁の心優しい真っ直ぐな女の子です。男のフリをして生きなければならない辛さ、殺人を犯してしまった苦しみ、最愛の母の死と、10代の若さで苦悩と悲しみを一身に背負っていました。オスカルの精神力の強さはユリウスにはありません。記憶や思考力を失くして自分を守るのです。とても責める気にはなれませんが、アレクセイを貶めたユリウスの失言や過ちを許せない、好きになれないとする読者も多いのです。ユリウスはオスカルとは異なり、主人公らしくない主人公なのです。

🔹オル窓には実質的な主人公が3人います。ユリウス、アレクセイ(クラウス)とイザークです。※下記「ユリウスを愛した男たち」参照

🔹オル窓の魅力は脇を演じる登場人物の多彩さです。男も女も誰もが個性的でキャラがしっかり立っていて魅力的です。池田理代子さんの凄さですね。イイ男とイイ女など絵も素敵で、数多い登場人物の誰一人見間違えることがありません。

🔹アレクセイと人気を二分するレオニード・ユスーポス侯には熱烈なファンがいます。ロシア政府の陸軍士官で、清廉潔白、頭脳明晰、自分を厳しく律するクールさで冷淡に見えますが実は懐が深いイイ男なのです。近年、家事も子育ても協力してくれるイクメンが人気ですが、ホントのところ、多くの女性はレオニードのような男性を理想としているように思います(^^)

🔹多彩な登場人物たちが織りなすドラマが、複雑なロシア革命を描ききるのに不可欠になっていることも見逃せません。どのストーリーも印象的で、池田理代子さんの才能の凄さを感じます。哲学的な箇所も多く、プーシキンの詩に涙しました。男性ファンが多いのもオル窓が特別とされる所以です。

🔹ユリウスのキャラを弱くしたのは、主人公に人気を集中させず、魅力的なほかの登場人物たちに光を当てるためかもしれない・・・と最近思うようになりました。オル窓に出会えたことに感謝せずにはいられません。

 

▫️▫️▫️▫️

オスカルとユリウスを愛した男たちを紹介します(^^)

🔶オスカルを愛した男たち

アンドレ: オスカルのばあやの孫で幼馴染み。身分違いの恋に苦悩するがオスカルも彼を愛していることに気付き結ばれる。最後までオスカルを守り抜く。

ジェローデル: オスカルの父親が選んだ婿候補。近衛隊でオスカルの部下だったが、ずっとオスカルに心を寄せていた。オスカルの心がアンドレにあることを知って身をひいた。

アラン: 荒くれ者揃いの衛兵隊の兵士で貴族だが平民より貧しい暮らしをしている。新任のオスカルに反発するが後に隊長として認め、密かにオスカルを慕うようになる。オスカルの最期を看取った。

 

🔹ユリウスを愛した男たち

アレクセイ: 主人公の一人。ロシアの名門貴族ミハイロフ侯爵の愛人の子として生まれ、6歳の時侯爵家に引き取られる。父母は亡くなっていたが、腹違いの兄、祖母、執事の愛情をたっぷり受けて育つ。兄は革命を志したが官憲に捕まり20歳の若さで処刑された。アレクセイは兄の婚約者と彼女の国ドイツに逃れるが、ロシアに帰り兄の遺志を継いで革命の闘志になる。ドイツ時代からユリウスを愛していた。

レオニード: 名門貴族で皇帝の信任が厚く皇帝の姪を妻にするが、彼女の我儘ぶりに閉口していた。ロシアに到着したユリウスは騒動に巻き込まれ、レオニードの部下に助けられてユスーポフ邸に滞在することになる。男のパスポートを持ち革命家アレクセイの名を口にしたユリウスを警戒していたが、やがて彼女を愛するようになる。ニコライ2世を廃位に追い込んだケレンスキー政権に対しクーデターを画策するが露見して自害。最後まで皇帝への忠誠を貫いた。

イザーク: ウイーン編の主人公ピアノの天才でユリウスの親友。ユリウスが女と知ってからはユリウスを愛するようになるが、ユリウスがクラウスを愛していることを知っていた。ウイーンに留学してピアノで成功するが女難の相あり。もてあそばれたことがあり、結婚した娼婦とは常識の尺度が違い離婚。別れた妻は男の子を出産して他界。指が動かなくなりピアノを弾けなくなったイザークは幼い息子を連れてレーゲンスブルクに帰る。

ダーヴィト: 博識で包容力がある学生時代の最上級生。ユリウスが女であることを誰よりも早く見抜くが知らないフリをしていた。同性愛者と思われても気にせずユリウスを口説くが、彼女の心にクラウス(アレクセイ)しかいないことを知ってからは、二人を見守るようになる。終盤、持ち前の洞察力でユリウスの生家にまつわる謎を解き、クラウスとユリウスがロシアで一緒だったことも突き止める。廃人と化して帰国したユリウスが唯一心を許した人物でこの物語のまとめ役。ユリウスの姉マリア・バルバラにプロポーズする場面で物語が終わる。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

この物語のオルフェウスの窓とは、ユリウスたちの音楽学校の古い塔にある窓のことで、この窓には伝説がありました。窓から最初に見た女性と宿命的な恋をするがギリシャ神話のオルフェウスとエウリディケの悲恋にならって悲劇に終わるという言い伝えです。クラウス(アレクセイ)とイザークはそれぞれこの窓から最初にユリウスを見ました。アレクセイとユリウスは伝説にならいました。イザークは伝説の対象外でしたが結婚は悲劇的な結果に終わっています。ユリウスの母親とヴィルクリヒ先生はこの窓で出逢い、この窓で散りました。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

下は私の愛蔵書です。古いのでところどころ糊落ちしていますが時々引っ張り出して読んでいます。どちらも飽きることがない名作です。

オルフェウスの窓 全18巻 マーガレット・コミックス

 

ベルサイユのばら 全9巻 + 外伝 マーガレット・コミックス