ORIHIME’s diary

利用していたブログサービスが閉鎖となり、旧記事とともに引っ越してきました。テーマは「好奇心、感動、そして感謝」です。

オルフェウスの窓 vs. ベルサイユのばら

当ブログに最も多くのアクセスをいただいている記事は漫画「オルフェウスの窓」に関するものです。特に人気キャラクターの「レオニード・ユスーポフ」と「年表」の二つの記事がGoogle、Yahoo 両方の検索結果のトップに挙げられ、ほかの記事も双方のトップページに入っています。アクセスしてくださった皆さま、ありがとうございます。それにしてもオルフェウスの窓」は50年前の作品で、私が一連の記事をアップしたのが今年5月です。この時期の注目度の高さにとても驚いています。オル窓ファンのブロガーさんは、「ベルサイユのばら」のアニメ化が決まったのでオル窓も注目されているのではと分析しています。

半世紀に亘り人気が衰えない「ベルサイユのばら」。映画化、宝塚の舞台化、ミュージカル化、アニメ化を経て、50周年を記念して再度アニメ化されることになりました。少女漫画史上最強の「ベルサイユのばら」の姉妹作品として熱烈なファンを持つ「オルフェウスの窓」。この二つの作品の魅力を比べてみたいと思います。

 

※ 以下、ネタバレがあります。

🔷オル窓(オルフェウスの窓)  vs. ベルばら(ベルサイユのばら)🔶

 

オル窓はベルばら人気を受けて池田理代子さんが創作した作品でどちらも主人公が男装の麗人です。物語の背景はベルばらがフランス革命、オル窓がロシア革命と共通する部分が多いのですが、一般的な知名度は圧倒的にベルばらが高く、オル窓は知る人ぞ知る作品といえます。

 

🔸ベルばらはベルサイユとパリが舞台です。前半はマリー・アントワネットを囲む宮殿の女たちの闘いなど華やかさ満載の少女漫画の世界で、後半は登場人物たちのラブストーリーと革命への道が描かれます。

🔹一方、オル窓はドイツのレーゲンスブルク、ウイーン、ロシア、再びドイツと舞台が変わる長編です。主要な登場人物が多く、多様な人間関係を見落とすと先でつまずきます。レーゲンスブルク編は音楽学校のストーリー+主人公ユリウスの生家に関わるサスペンスで、ウイーン編は音楽の世界、ロシア編では幾つもの人間ドラマと並行してロシア革命が描かれます。

 

 

🔶オスカル vs. ユリウス🔷

🔸ベルばらの主人公オスカルは代々フランス王家の軍隊を統率する貴族の名家に生まれました。男の子に恵まれず嘆いた父親はオスカルを男の子のように育てます。成長したオスカルは男装をして近衛士官となり、オーストリアから王太子に嫁いだばかりのマリー・アントワネットを警護します。アントワネットはオスカルに絶大な信頼を寄せました。

オスカルのモデルは映画「ベニスに死す」の美少年ビョルン・アンドレセン

 🔹オル窓の主人公ユリウスは愛人の子としてドイツに生まれました。貴族の父親はユリウスが生まれる前に母親を捨て、ユリウスは父なし子といじめられて育ちます。貴族の家に男の子がいなかったため母親はユリウスを男の子として育て、当主の正妻が亡くなった時、15歳になったユリウスを連れて後妻に収まりました。ユリウスは将来家督と財産を相続することになります。ユリウスは健気に男の子を装いますが実は女の子として生きることが夢でした。音楽学校に編入したユリウスは上級生のクラウス(ロシア名:アレクセイ)に恋をして女の子として目覚めていきますが、アレクセイは革命活動に身を投じるために故国ロシアに帰ってしまいます。

 

オスカルとユリウス 似ているように見えますがファンはしっかり識別できます。

🔸アントワネットスウェーデンの実在の貴族フェルゼンと恋に落ち、この恋は生涯続きました。取り巻きの夫人たちの誘いにのり贅沢の限りを尽くすアントワネットの浪費は国の財政をひっ迫させ、後に革命を誘発する一因になりますある日、民家で手当を受けたオスカルは、貴族とはあまりにも違う貧しい民の暮らしぶりを知って心を痛めます。時代が革命へと進む中、オスカルはある決心をします。

🔹ユリウスは、ユリウスの秘密を武器に母親を脅して襲いかかった闇医者を殺害します。母親と遺体を裏庭に埋めた夜は雪でした。その後ユリウスは夜の吹雪に怯えるようになります。ユリウスはピアノ科の教師ヘルマン・ヴィルクリヒから何度か殺意を感じたと母親に話します。ヘルマンはユリウスの母親がかつてオルフェウスの窓で出会った恋人でしたが、ユリウスを身ごもっていた彼女は姿を消しました。彼女は現在のヘルマンを知っていますが彼は現在の彼女を知りません。ユリウスを守るためにヘルマンに会いに出かけた母親をヘルマンはオルフェウスの窓から突き落としますが、彼女が18年間捜し続けた恋人であり、仇の妻だったと知り驚愕します。慌てて片手を掴みますが支えきれず彼は共に落ちる道を選びました。ユリウスたちは知りませんでしたが、ユリウスの父親はかつてある貴族一家をスパイ容疑で皆殺しにしました。ヘルマンはその生き残りだったのです。二人の転落死は心中事件として片付けられ、ユリウスは精神を病んでいきます。ユリウスを支えていたのはアレクセイへの想いでした。彼女は故郷を捨ててアレクセイがいるロシアに旅立ちます。

🔸オスカルはアントワネットに別れを告げ、貴族の近衛隊から平民が多い衛兵隊への異動を志願しました。荒くれ者揃いの部隊でしたが持ち前の心意気で統率し、市民に銃口を向ける軍隊から民を護ります。オスカルを愛するばあやの孫息子アンドレオスカルと初めて結ばれますが、翌日オスカルを銃撃から守って死亡。間もなくオスカルも銃撃戦で命を落とします。革命は成就し、ルイ16世とアントワネットが断頭台に消え、物語は終わります。

🔹ユリウスはロシアで記憶をなくし、レオニード・ユスーポフ侯爵邸で歳月を過ごします。ロシアに来てから8年目、記憶がほとんどないままアレクセイに遭遇したユリウスですがアレクセイへの想いだけは憶えていました。アレクセイと幸せに暮らしますがユリウスは正常な思考力を失っていました。アレクセイを愛すれば愛するほど正しい判断ができなくなり、過ってアレクセイを敵の標的にしてしまいます。最愛の人を失い完全に記憶をなくしたユリウスはレオニードの配慮でレーゲンスブルクに帰ります。腹違いの姉マリア・バルバラは何も言わずにユリウスを抱きしめました。ユリウスはある出来事をきっかけに全てを思い出して最期を迎えます。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

ベルばらもオル窓もハッピーエンドではなく悲劇で終わります。それなのにどちらも根強い人気があります。人気を支える魅力は何でしょう?

🔸オスカルは容姿人格とも優れた主人公の王道をいく主人公で、性別を超えて読者を魅了します。華やかな宮殿に渦巻く女たちの権力争いや嫉妬に立ち向かうオスカルの胸のすくような言動にワクワクします。このオスカル人気がベルばら人気の大半を占めているように思います。愛らしくて美しいアントワネットと顔も性格もイケメンの男らしいフェルゼンの切ないラブストーリーが革命の流れに組み込まれていることも忘れてはなりません。この3人の主要人物はみな悲しい最後を遂げますが、アントワネットとフェルゼンは史実なので納得するしかありません。オスカルの死はショックでしたが、意志を貫いたオスカルらしい最期でした。もし、生き抜いて生存していたアンドレと夫婦になって平凡なオンナになったとしたら、これほどの余韻は残らなかったでしょう。

🔹ベルばらファンでオル窓を知らない人がいても、オル窓ファンでベルばらを知らない人はいません。そのため、どうしてもオスカルとオル窓のユリウスを比べてしまいます。ユリウスは、意地の悪さや嫉妬とは無縁の心優しい真っ直ぐな女の子です。男のフリをして生きなければならない辛さ、殺人を犯してしまった苦しみ、最愛の母の死と、10代の若さで苦悩と悲しみを一身に背負っていました。オスカルの精神力の強さはユリウスにはありません。記憶や思考力を失くして自分を守るのです。とても責める気にはなれませんが、アレクセイを貶めたユリウスの失言や過ちを許せない、好きになれないとする読者も多いのです。ユリウスはオスカルとは異なり、主人公らしくない主人公なのです。

🔹オル窓には実質的な主人公が3人います。ユリウス、アレクセイ(クラウス)とイザークです。※下記「ユリウスを愛した男たち」参照

🔹オル窓の魅力は脇を演じる登場人物の多彩さです。男も女も誰もが個性的でキャラがしっかり立っていて魅力的です。池田理代子さんの凄さですね。イイ男とイイ女など絵も素敵で、数多い登場人物の誰一人見間違えることがありません。

🔹アレクセイと人気を二分するレオニード・ユスーポス侯には熱烈なファンがいます。ロシア政府の陸軍士官で、清廉潔白、頭脳明晰、自分を厳しく律するクールさで冷淡に見えますが実は懐が深いイイ男なのです。近年、家事も子育ても協力してくれるイクメンが人気ですが、ホントのところ、多くの女性はレオニードのような男性を理想としているように思います(^^)

🔹多彩な登場人物たちが織りなすドラマが、複雑なロシア革命を描ききるのに不可欠になっていることも見逃せません。どのストーリーも印象的で、池田理代子さんの才能の凄さを感じます。哲学的な箇所も多く、プーシキンの詩に涙しました。男性ファンが多いのもオル窓が特別とされる所以です。

🔹ユリウスのキャラを弱くしたのは、主人公に人気を集中させず、魅力的なほかの登場人物たちに光を当てるためかもしれない・・・と最近思うようになりました。オル窓に出会えたことに感謝せずにはいられません。

 

▫️▫️▫️▫️

オスカルとユリウスを愛した男たちを紹介します(^^)

🔶オスカルを愛した男たち

アンドレ: オスカルのばあやの孫で幼馴染み。身分違いの恋に苦悩するがオスカルも彼を愛していることに気付き結ばれる。最後までオスカルを守り抜く。

ジェローデル: オスカルの父親が選んだ婿候補。近衛隊でオスカルの部下だったが、ずっとオスカルに心を寄せていた。オスカルの心がアンドレにあることを知って身をひいた。

アラン: 荒くれ者揃いの衛兵隊の兵士で貴族だが平民より貧しい暮らしをしている。新任のオスカルに反発するが後に隊長として認め、密かにオスカルを慕うようになる。オスカルの最期を看取った。

 

🔹ユリウスを愛した男たち

アレクセイ: 主人公の一人。ロシアの名門貴族ミハイロフ侯爵の愛人の子として生まれ、6歳の時侯爵家に引き取られる。父母は亡くなっていたが、腹違いの兄、祖母、執事の愛情をたっぷり受けて育つ。兄は革命を志したが官憲に捕まり20歳の若さで処刑された。アレクセイは兄の婚約者と彼女の国ドイツに逃れるが、ロシアに帰り兄の遺志を継いで革命の闘志になる。ドイツ時代からユリウスを愛していた。

レオニード: 名門貴族で皇帝の信任が厚く皇帝の姪を妻にするが、彼女の我儘ぶりに閉口していた。ロシアに到着したユリウスは騒動に巻き込まれ、レオニードの部下に助けられてユスーポフ邸に滞在することになる。男のパスポートを持ち革命家アレクセイの名を口にしたユリウスを警戒していたが、やがて彼女を愛するようになる。ニコライ2世を廃位に追い込んだケレンスキー政権に対しクーデターを画策するが露見して自害。最後まで皇帝への忠誠を貫いた。

イザーク: ウイーン編の主人公ピアノの天才でユリウスの親友。ユリウスが女と知ってからはユリウスを愛するようになるが、ユリウスがクラウスを愛していることを知っていた。ウイーンに留学してピアノで成功するが女難の相あり。もてあそばれたことがあり、結婚した娼婦とは常識の尺度が違い離婚。別れた妻は男の子を出産して他界。指が動かなくなりピアノを弾けなくなったイザークは幼い息子を連れてレーゲンスブルクに帰る。

ダーヴィト: 博識で包容力がある学生時代の最上級生。ユリウスが女であることを誰よりも早く見抜くが知らないフリをしていた。同性愛者と思われても気にせずユリウスを口説くが、彼女の心にクラウス(アレクセイ)しかいないことを知ってからは、二人を見守るようになる。終盤、持ち前の洞察力でユリウスの生家にまつわる謎を解き、クラウスとユリウスがロシアで一緒だったことも突き止める。廃人と化して帰国したユリウスが唯一心を許した人物でこの物語のまとめ役。ユリウスの姉マリア・バルバラにプロポーズする場面で物語が終わる。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

この物語のオルフェウスの窓とは、ユリウスたちの音楽学校の古い塔にある窓のことで、この窓には伝説がありました。窓から最初に見た女性と宿命的な恋をするがギリシャ神話のオルフェウスとエウリディケの悲恋にならって悲劇に終わるという言い伝えです。クラウス(アレクセイ)とイザークはそれぞれこの窓から最初にユリウスを見ました。アレクセイとユリウスは伝説にならいました。イザークは伝説の対象外でしたが結婚は悲劇的な結果に終わっています。ユリウスの母親とヴィルクリヒ先生はこの窓で出逢い、この窓で散りました。

 

▫️▫️▫️▫️▫️

下は私の愛蔵書です。古いのでところどころ糊落ちしていますが時々引っ張り出して読んでいます。どちらも飽きることがない名作です。

オルフェウスの窓 全18巻 マーガレット・コミックス

 

ベルサイユのばら 全9巻 + 外伝 マーガレット・コミックス